#2 『つづきのない歌』
異例のCDデビューを果たしたKUROFUNEだったが、圭吾はそんな自分たちに不安を抱き、アイドルとして何かをつかもうともがいていた。そんな中、勇人が口ずさむ歌を聴き、コレだと感じたものの勇人は何故か乗り気ではなく…。
あの頃の僕は、デビューできた嬉しさの反面『本当にこのままで良いのだろうか?』と荒海に揉まれる小舟のようだった… | |
そんであの口上か。久々に聞かせろよ | |
い、今か…? | |
今 | |
い、いいだろう。お望みとあらば……『メルシー、プリンセス。今宵もKUROFUNEへのご乗船とてもうれしいよ。たとえこの身に槍が降り注ごうと、戦火に巻き込まれようとも、プリンセスへの愛は揺るがない。そう、貴方のためなら即位する!』……どうだ勇人! | |
なげぇ | |
言えといったのは勇人だろう!三神さんにも言われただろう、アイドルとしてデビューできたからってアイドルになれるわけじゃないって | |
あの頃の圭吾は、それは深く深く考え込んでいたな。それこそ、バイカル湖の湖底のように | |
慎…!そうなんだ。あの頃の僕は……色々と模索していたんだ。僕達はDearDreamと違って、ドリフェス!で優勝したわけじゃなかったからね | |
どんな手段であれ、デビューはデビューだ | |
プリンセスのエールのおかげでね。それはとてもありがたいと思っているよ。だからこそ、何か恩返しがしたい。今までとは違う僕達にしか見せられない何かをつかみたいって思ったんだ | |
圭吾にとっては、それがあの歌だったのか | |
ああ、すごく良い歌だったから、絶対に僕達の新曲にしたいって思ったんだ。あの歌をモノにして僕達のKUROFUNEの新たな航海の標にしようって | |
サビがなかったけどな | |
だから僕は続きを作ってくれと勇人に頼み込んだんだ。だけど、まさかあの歌にあんな秘密があったなんて…… | |
秘密ってほどのもんじゃねぇ。ただ言う必要もねぇってあの時は思っただけだ | |
歌詞にした時点で、言葉は手元を離れて聴く人に委ねることになる。 だからこそ幅広い解釈で受け止めてもらえるとはいえ、真実とは違った受け取り方もある。…俺にも経験があります |
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だからって"鎖国"はねぇだろ | |
勇人だって何も言ってくれなかったじゃないか! | |
まあ、ふたりとも。その話はまた次の機会にゆっくりと聞かせてください |